講師は、古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家の藤村シシンさん。
めちゃめちゃ面白かった!ヽ(´∀`)ノ
面白かったネタを箇条書き。
講座の導入で、ヨーロッパ等で玄関に飾られる、邪視(邪眼や魔眼)と呼ばれる魔除けや護符の話を聞きながら、「魔術」って感覚的には日本でいう神社やお寺でもらう護符やお守りのイメージに近かったので、なるほどそう言うとっかかりでいいのかってなった。
「Magic」(魔法、魔術)の語源が、「magos」で異教の司祭や彼らの儀式等を指していたと聞いたのち、プリニウス(学者)の見解みると、なるほど異教のものがやってきて医術だ宗教だ占術だって人心を掌握してく状況って拒否反応あるよなとか。
プラトン(哲学者)の「魔術」は加害者被害者双方に魔力の影響を信じ込ませる方法って見解は、現代人が一番納得できるのではと思ったり。例えば、呪縛人形(藁人形的なもの)を見ちゃったら、それを無視する事は不可能よね、めっさ気にしちゃうよね。それが魔術の力の源だっていう。
ところで、無視できない→魔術を失くすのは不可能、∴魔術師抹殺しちゃうしかねえなってプラトン先生過激か。
で、オルフェウス(魔術師)が言ったとされる、伝オルフェウス「鉱物賛歌」(オルフェウスが書いたと言われている本)の引用は、まとめると、魔術師はめっさ万能☆こんな素敵な力なのに今は蔑まれている…しかし私を信じる者にはこの力を授けると約束しよう!的な。ちょっと選挙演説ぽくもあり。
実際頂いた資料にある、伝オルフェウス「鉱物賛歌」の引用部分は、詩のような文章でとても格好良い。中二心爆発。
この引用の中で「もう誰も神々と話す術を知らない」って文があるんだけど、この時点でギリシャ神話的な神々の祭壇に何かするとか神託を得るとか巫女さんが云々みたいな活動は下火になってきてたんだろか…いやでもそもそも魔術師がいるってのは異教が国に入ってきてるって事なのか?いやでも私らが知ってるギリシャ神話の神々も元々いた柱とあとからきた柱がいるわけでそれもまた異教がやってきた状態なんだよね。
とかいろいろ考えるの楽しい。あとで調べてみたい。私のあとではいつくるのかわからないのだがしかし。
古代では区別はなかったが、現代的に区別するなら、呪詛板や毒物等が黒魔術、お守りや医療系の白魔術、状況によって白にも黒にもなる中間型にわけられるという話。
つか毒を盛るのも魔術(黒)くくりなんだなと。魔術って不能犯のイメージだけどそれ普通に犯罪ではあるまいか。
中間型に、恋愛呪術があるのが面白かった。両想いなら白魔術、片恋なら好きじゃない方にとっては黒魔術と説明があり納得。死霊を呼び出して誰かに危害を加える事を望めば黒、でなければ白と、死霊呪術も中間型にあたるそう。
実際の魔術のやり方はこうだ!って話も面白かった。
魔術に必要なのものの中で、呪文はわかるが、叫びてなんぞ?と思いきや、魔女独特のヒーッヒヒッ的な高笑いがそれらしい。まじか。
そして、呪文は、母国語じゃない言語が良いらしい。
個人的にここまで話を聞いてる中で、魔術見解はプラトンさん派だったので、高笑いの叫びや、何言ってるかわからん言語とか、良くわからん方がそれっぽいというか想像力を増大する魔術の力を増幅させる感覚はあるなーと。母国語以外を使う理由として異教の神の力を借りるとかって説明もあった気がするので(どこタイミングで訊いたか失念…)わからないものは、ある種の期待や恐怖を増大するよなと。
代表的な呪文として、エフェソス六字の説明があり。
六字というか六つの単語でできた文で、6つの単語をそれぞれ石に刻んで持ってると防御力が上がる魔術とか。日本で言う九字を切るのに近いものと聞いてなるほどと。
急げ、急げ、早く!早く!という意味合い(ぶっちゃけなるはやで!)の陰陽師の急急如律令のような呪文もあるそうな。
時間があるのでと断線気味に紹介されたテュアナのアポロニオスのカッコイイエピソードが最高に面白かった。
後1世紀に吸血鬼と対決。→完全にバンパイアハンター
闘う際には、手にはめた宝石のついた指輪から使い魔が飛び出す→ポケモントレーナー
魔力が蓄えられている長髪をバッサリ切り落とされ兵士に監禁される、魔術師としてはほぼ瀕死の状態→からの大逆転テレポーテーション(大技)で脱出→まるで瀕死の状態から必殺奥義をくり出す聖闘士のよう。
やはり中二心が疼く格好良さ。
具体的な魔術の例として「ギリシャ語魔術パピルス」という後3〜5世紀の魔術のマニュアル本から「友達ができる魔術」をご教授いただく。
原料は、ムシコブ、硫酸銅、トリュフ、ミルラ、アラビアガム、それぞれ2:2:4:1:3ですりつぶしてインクにして、ヨモギの根に呪文を書いて(呪文は講義資料に記載されてました)懐に入れて持ち歩くと、街で声かけまくられるレベルの人気者になるそうな。(セロリも使うんだけどどのタイミングだったか聞き逃してしまったので私はこの魔術が試せない)
これらの原料は、現在すべてAmazonで購入可能だそうです。
ぶっちゃけトリュフが高価で手に入れがたい所はありそう。
講師のシシンさんは実際これを行ってみたそうですが、原料に香りの高いものが多いので、かわってるけど悪くない香りとか。ある意味匂い袋的な香りで人を引き付ける的な意味合いなどあったのでしょうかね…謎です。
透明になる魔術もあったらしい。いつの時代も人は透明にたりがたる。
物理的にも精神的にも入手し辛い何か(なんとなく割愛)とバラをユリの油ですりつぶして体にぬって、呪文をとなえるのですが、呪文の中にアヌビスやオシリス等、異教の神々の名前が羅列しててなるほどこれかと。全部メモできなかったのでエジプト神のみですが他の地域の神の名前もあったのだろか。
宝石の歌→宝石を使う魔術。
高価な宝石、メノウを火にくべる天候を操る魔術が豪快過ぎる。
こはくをすりつぶして飲むとおねしょが治るとかコスパ高め。
水晶玉は、魔術師や医師が火をおこす道具、ある意味マッチとして持っていた。
当時、火はなかなか起こせない貴重なもの、魔術師は、水晶玉でスマートに火をつけたり、医師は、起こした火でキズを焼いて止血したり消毒したりしてたとか。なるほどこれも魔術師が使えば白魔術であるなと。でも火を起こせるような水晶玉は高い。
∴宝石魔術は、金がモノをいう…世知辛い。
磁鉄鉱が知りたい事にこたえてくれる魔術ができそうでできない難しさだった。
10日間体を清め(肉、酒、温泉、性行為禁止)→石をきれいな水で清める→石をきれいな布で包み赤子のように育てる。(どういうかといまだに困惑している…)→水晶でつけたろうそくの火で愛でる(…愛でるとな…)→石が泣き出す(…マジか…)→泣き出した石に驚かずに聞きたい事を聞くと石はそれに答えてくれる。
磁鉄鉱は手に入るがしかし火が付くほどの水晶は高価…それ以前に体を清められず断念するか。
古代人が魔術を行う目的は、健康、性欲(恋愛がらみもこれかな)、予知が多く、現代人が神仏に願うものとあまりかわらないのが印象的だった。
ただ名誉(商売繁盛系も含むと説明があった気がする…)も現代人なら多そうだけど、古代人の目的の中では9%弱と下位。身分制度がかっちりしてる事や働くのは奴隷や外人と決まってたからみたいな背景も関係してるんだろうか。
呪詛板という恨みを晴らす、相手を陥れたい系の魔術。
呪詛板とは、金属板(当時は主に鉛板、水道に使ってるのを引っぺがして使ったりしてたらしい。)に絵や記号や文字でとにかく相手を不幸にして欲しい旨を書いて、人に見せるものでなくこっそり冥界の神等に呼んでもらいたいものなので、墓の中や土の中などにひっそり埋められる。時代を経ても金属は残りがち、埋められて水や空気に触れないので残りがち、よって呪詛板はたくさん見つかっていて、古代人の考え方や感情をダイレクトに感じられる貴重な資料になっているそうな。
2つの呪詛板が例としてあげられてたけど、実際ほんと情報量が半端ない。
一つは貧しい小さな家からいろいろ盗んだ泥棒たち全員を冥界の神々に引き渡しますって感じの内容と共にヘカテの絵がかいてたりする。貧しい小さな家という記載もそうだが、盗まれたものからあまり裕福な家ではない事がわかり、引き渡したい神々の名前がたくさんあるのがもうほんっとマジ許せねえ感あって、ヘカテ様の絵が微妙なのが微笑ましさと共に当時の人の市井の人の絵心ととは言えつたない中にも書き込んでる感じからヘカテに対する思い入れを感じてみたり。
もう一つは、戦車競走の名誉が欲しいのでライバルを陥れたい系呪詛板。こちらの情報量も半端なく。
内容見てると、冥界の力で大天使を呼び出すとか書いてて、悪魔で天使呼び出す感じで良くわからないのですがものすごく緻密に書かれた文字や絵が半端ないので執念を感じさせる逸品でした。なんかライバルが蛇に絡まれて横たわってるぽい絵とか秀逸。
また通常「誰誰の息子」という時は、父の名前の息子という言い方をするけど、呪詛板では「母の名前」の息子誰誰という記載をするとか。アルファベットを逆から書くのも呪詛を強めるとか、逆にすることが悪い力を強めるみたいな感覚があったのだろうか。ちょっとゲン担ぎ感ある。
また魔法陣というと、五芒星六芒星と円みたいな感覚がありますが、この呪詛板に書かれていたのは母音の羅列。母音は力を持っているとされていたので、それを何度もまとめて書き入れていて、それを魔法陣としているとか。
どちらの呪詛板にも力のある文字(記号)みたいなのがちらほら書かれていたけどこれの原型というか元みたいなものはあるのだろうか。アスタリスクみたいなの結構ある感じ。
講師のシシンさんは呪詛板もしっかり実演されており。
銅の金属板に余白アリで揃えて綺麗に文章を書いてみたそうだけど、金属をひっかく音は相当に不快なので書ききれるほどの強い感情がないとなかなか書ききれないのではという見解をされてて、なるほどと思った。
また当時金属板は高価なので板は小さかったりするので、余白を取ったり綺麗に書くという感覚はなかったのではと友人の死霊術師さんに指摘されたエピソードはとても面白かった。その差がまんま古代人と現代人の違いの一つでもあるのよね。
最後にまとめとしては、魔術は効果があったのかといえば、現代人と同じく、古代の人々も半信半疑でやってる。
現代人の神仏へのお参りや占い師に占ってもらったりそう言う事に対する感覚に近いんだろなーって思いました。
魔術はいつ効果が発揮されるかと言えば、魔術としての人形や呪詛板等を見てしまった時、自分が呪われているのでは等と想像力がその人への鎖となって魔術が力を持ってしまう場合がある。(これはプラトンさんの見解と一緒になるのかな)
魔術、その力にどうやって対抗するか →自分の名前を書けばいいだけの呪詛返しの護符が今ならただで!という感じで講座資料最終ページに載っててまあお得!って気持ちになりましたwww
オチまで最高に面白い講座でした。
実は個人的には、古代ギリシャの科学、死霊術と、仙台、札幌の教室の講座が気になっていたのですが遠出叶わず、一番近場だった弘前の教室の講座を受けたのですが、魔術も最高に楽しかった…というか弘前の講座に岩手や北海道から参戦されてる方もいらっしゃったようで、最高に滾りました…遠征の格好良さったらない。
とはいえ今期の講座は行けそうにないのですが、また東北周辺で講座が開かれる機会があれば絶対行きたい!
ラベル:古代ギリシャ
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